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アルミ球作成体験を通したものづくり技術紹介イベント
帝京大学 理工学部総合理工学科 西口 直浩

(この記事は2024年7月に発行したメカトップ関東No.56の栃木ブロックの記事をブラッシュアップしてweb化したものです)

はじめに

 近年の日本の製造業を取巻く環境では、少子高齢化に伴う「技術者の人手不足」、「人材育成」の課題に加え、消費者ニーズの変化に伴う「製品形状の複雑化」、「品質の更なる向上」、脱炭素化やデジタルトランスフォーメーションの実現に向けた気運の高まりに伴う「生産効率の改善」などが求められています。


帝京大学 理工学部総合理工学科 西口直浩

 これらの背景から当研究室では、数値制御工作機械(NC工作機械)の高速、高精度、高能率化技術に関する研究に加え、これからの日本のものづくり産業を支えていく若い方々に、ものづくりの面白さを知ってもらうことを目的として、地域の子ども向けイベントや大学のオープンキャンパスで、ものづくり技術紹介イベントを出展しています。

図1 アルミ玉作成方法を説明中

ものづくり技術紹介イベント

 本イベントでは、我々の身の回りにある多くの製品、特に車やプラスチック製品の生産過程で用いられている「金型」を、アルミ玉製作を通して紹介しています。
 はじめに、参加者のみなさんにアルミホイールを手やハンマーでサンプルのアルミ玉の大きさになるまで、丸めてもらうことに挑戦してもらった上で(図2)、金型(図3)を用いてアルミ玉ができるのを見ていただきます。図3のようなアルミ玉になるまで、手を使っての作業するのは非常に困難であるのに比べ(実際そこまでできる人はほとんどいません)、金型を用いるとアッという間にできあがるのを見てもらうことにより、金型の効果を実感してもらっています。また、この金型がペットボトルといった身の周りにある製品の製造に欠かせないものであることを紹介すると共に、金型を生産するNC工作機械の紹介も行っています。
 このようなイベントを通して、工作機械が身近な製品を生産するのに活躍していることを広く知ってもらい、ものづくりに関心を持ってもらう活動に取り組んでいます。

図2 子ども向けイベントでのアルミ玉作成

図3 アルミ玉作成用金型

NC工作機械の運動特性評価システム

 金型の製造過程には「設計」、「NC工作機械による加工」、「磨き」などが含まれていますが、その工程の多くを占める「磨き」作業は、NC工作機械による加工結果の影響を大きく受けます。そこで、この「磨き工程」の工数を削減するため、NC工作機械の高速・高精度化に関する研究・開発がこれまでも活発に行われています。本研究では、これらNC工作機械への要望に大きく関わる送り軸の運動特性に注目し、それを測定する装置や測定技術に関する研究・開発に取り組んでいます。

図4 運動特性評価システム

運動誤差の加工面への転写特性

 上記で開発した評価システムを用いた実験により判明したNC工作機械の送り軸の運動誤差が、加工面に対しどのような影響を及ぼすのか、その転写特性に注目した調査も行っています。これまでの研究では、送り軸の運動方向反転時における運動誤差に注目し、その加工面への転写特性について調査を行ってきました。その結果、加工面に対し凹形状に発生する運動誤差に比べ、凸形状となる運動誤差は加工面へ転写されづらい場合があることが分かりました。このように、さまざまな送り軸の運動特性と加工面への転写特性の調査を進めることで、運動誤差による加工誤差を効率的に補正する機能の開発に取り組んでいます。

図5 運動誤差の加工面への転写特性

この記事を書いた人

帝京大学 理工学部 総合理工学科 西口直浩

㈱牧野フライス製作所、長野県工科短期大学校、愛知工科大学に勤続後、現在、帝京大学理工学部に至る。NC工作機械およびそれを取巻く生産設備の、高速・高精度・高能率化および汎用性向上の技術に関する研究開発に従事。博士(工学)。

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